
こんにちは!うさたんです♪
前回の記事では、日本たばこ産業(JT)の基本情報や歴史、現在の事業構成についてご紹介しました。
JTは日本国内のたばこ会社という印象が強いかもしれませんが、現在は世界130以上の国と地域で製品を販売するグローバル企業です。そして、グループの売上や利益の大部分を生み出しているのが、今回取り上げる「たばこ事業🚬」です。
世界的に健康意識が高まり、紙巻たばこの需要は長期的に減少しています。それにもかかわらず、JTのたばこ事業は売上と利益を伸ばしています。
なぜ、販売本数の減少が予想される市場で成長できるのでしょうか。また、JTが力を入れている加熱式たばこ「Ploom」は、将来、紙巻たばこに並ぶ事業へ成長できるのでしょうか。
今回は、現在の利益を支える紙巻たばこと、将来の成長が期待される加熱式たばこを中心に、JTのたばこ事業について詳しく確認・深掘りしていきます。
なお、本シリーズはJTへの投資を推奨するものではありません。投資には絶対の正解や再現性はなく、同じ企業でも投資目的や購入した株価によって結果は変わります。JTを知る数多くあるきっかけの一つとして、参考にしていただけたら嬉しいです🐰
- JTのたばこ事業は2つに分けられる
- 現在の利益を支えているのは紙巻たばこ
- 値上げが利益を押し上げている
- 値上げを続けても大丈夫なのか
- 世界的なブランドがJTの強み
- 市場全体が縮小してもJTの販売数量は増加
- 将来の成長が期待されるRRP
- JTが最も力を入れているPloom
- Ploomはまだ育成途中の事業
- 紙巻たばこの利益でPloomを育てる
- たばこ事業の強みと注意点
- 今後確認したいポイント
- おわりに
JTのたばこ事業は2つに分けられる
JTのたばこ事業は、大きく次の2つに分けられます。
| 分類 | 主な製品 | JTにおける役割 |
|---|---|---|
| Combustibles(燃焼性たばこ) | 紙巻たばこ、手巻きたばこ、葉巻など | 現在の売上と利益を支える中心 |
| RRP(健康リスクを低減させる可能性のある製品) | 加熱式たばこ、E-Vapor、ニコチンパウチなど | 将来の第二の成長事業 |
Combustiblesとは、火をつけて使用するたばこ製品のことです。JTの資料では、製造を他社から請け負っている製品やRRPを除いた、紙巻たばこなどの燃焼性製品を指しています。
一方のRRPは「Reduced-Risk Products」の略です。JTは、紙巻たばこと比べて「喫煙に伴う健康リスクを低減させる可能性のある製品」と説明しています。Ploomなどの加熱式たばこや、液体を加熱するE-Vapor、口の中で使用するニコチンパウチなどが含まれます。
ただし、RRPは健康へのリスクがない製品という意味ではありません。あくまで紙巻たばこと比べてリスクを低減させる「可能性」がある製品であり、長期的な健康への影響については、今後も研究が必要です。
現在の利益を支えているのは紙巻たばこ
加熱式たばこの普及が進んでいますが、現時点でJTの売上と利益を支えている中心は、紙巻たばこなどのCombustiblesです。
統合報告書2026によると、2025年における世界のCombustiblesの総需要は約5兆本、金額に換算した市場規模は約131兆円と推定されています。
世界で最も大きい市場は中国で、世界の総需要の45%以上を占めています。その後に、インドネシア、ロシア、米国、トルコ、ドイツ、日本、エジプトなどが続きます。
紙巻たばこの販売本数は世界的に減少していますが、金額で見た市場規模は、製品価格の値上げなどによって成長が続いています。
簡単にまとめると、次のような仕組みです。
-
たばこを購入する人や本数は少しずつ減る
-
企業が製品価格を引き上げる
-
利益を得やすい主力ブランドの販売を増やす
-
競合他社から利用者を獲得する
-
本数の減少を値上げや販売シェアの拡大で補う
販売シェアとは、市場全体の中で自社製品が占める割合のことです。
例えば、市場全体の販売本数が100本から95本に減ったとしても、JTの販売本数が20本から21本に増えれば、JTの販売シェアは上昇します。市場全体が縮小していても、競合他社から利用者を獲得できれば、自社の販売本数や売上を伸ばすことは可能です。
これが、紙巻たばこの需要が減少する中でも、JTが利益成長を目指せる理由の一つです。
値上げが利益を押し上げている
JTの決算資料には、たばこ事業の利益が増減した理由として、次の4つの項目が掲載されています。
| 項目 | 分かりやすい意味 |
|---|---|
| Volume(販売数量) | 製品が売れた本数による影響 |
| Price/Mix(価格・販売構成) | 値上げや、販売する製品・地域の構成が変わった影響 |
| Others(その他) | Ploomへの投資、原材料費、物流費などの影響 |
| FX(為替) | 円安・円高など為替変動による影響 |
この中で特に重要なのが、Price/Mixです。
Priceは製品価格の値上げ、Mixは「何が、どこで、どのくらい売れたのか」という販売構成を表しています。
例えば、同じ100本を販売した場合でも、価格の低い製品が多く売れた場合と、価格の高い製品が多く売れた場合では、得られる売上や利益が変わります。また、収益性の高い国と低い国のどちらで多く売れたのかによっても、利益は変わります。
2025年度のJTでは、Price/Mixが調整後営業利益を2,975億円押し上げました。調整後営業利益とは、事業の実力を確認しやすくするため、一時的な損益などを除いて計算した利益です。
一方、Ploomへの投資拡大や、原材料費・物流費などの上昇によって、利益は1,643億円押し下げられました。それでも、値上げなどによるプラスの効果が費用増加を上回り、たばこ事業全体では大きな増益となりました。
2026年1~6月期にも、Price/Mixが調整後営業利益を1,542億円押し上げています。フィリピン、ロシア、トルコ、米国など、多くの市場で値上げの効果が表れました。
つまり、現在のJTの利益成長は、販売本数の増加だけでなく、世界各地で実施している値上げによって支えられている部分が大きいということです。
値上げを続けても大丈夫なのか
値上げによって利益が増えるのであれば、今後も値上げを続ければよいように見えるかもしれません。
しかし、値上げには限界があります。
価格が高くなりすぎると、利用者が購入本数を減らしたり、価格の安い製品へ乗り換えたりする可能性があります。このような動きをダウントレーディング(より安い商品へ乗り換えること)といいます。
また、正規の商品ではなく、税金が支払われていない違法なたばこなどへ利用者が流れる可能性もあります。国によって所得水準やたばこ税、競合製品の価格が異なるため、同じような値上げを世界中で実施できるわけではありません。
JTが値上げを続けながら利益を伸ばすためには、値上げ後も選んでもらえるブランド力が必要です。
価格が高くなってもWinstonやCamel、MEVIUSなどが選ばれ続けるのか。販売本数や販売シェアが大きく落ちていないか。今後の決算でも確認したいポイントです。
世界的なブランドがJTの強み
JTは、世界各地で多くのたばこブランドを展開しています。なかでも、次の4つをGFB(世界的な主力ブランド)と位置付けています。
-
Winston
-
Camel
-
MEVIUS
-
LD
2025年には、GFBの販売数量が7年連続で増加しました。JTのCombustibles販売数量に占めるGFBの割合も、2025年末時点で約74%に達しています。
特にWinstonとCamelは、中国国家煙草総公司を除いた世界市場において、それぞれ第2位、第3位のCombustiblesブランドとされています。
たばこは嗜好品のため、価格だけで商品が選ばれるとは限りません。味や香り、使い慣れていること、ブランドへの親しみ、購入しやすさなども選択に影響します。
そのため、世界的に知られているブランドを持っていることは、値上げ後も利用者を維持したり、他社から販売シェアを獲得したりするうえで、大きな強みになります。
ただし、ブランド力があれば無制限に値上げできるわけではありません。値上げ後の販売数量と販売シェアが維持されているかを、継続して確認する必要があります。
市場全体が縮小してもJTの販売数量は増加
2025年は、JTが事業を展開する主要市場において、Combustiblesの総需要が2.7%減少しました。一方、JTのCombustibles販売数量は1.7%増加しています。
市場全体では販売本数が減ったものの、JTは50を超える市場で販売数量を伸ばしました。主力ブランドの成長や販売シェアの拡大に加え、2024年に買収した米国Vector Groupの事業が加わったことも影響しています。
2026年1~6月期の販売数量は、次のとおりです。
| 項目 | 2026年1~6月 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| たばこ製品の総販売数量 | 2,860億本 | +1.0% |
| Combustibles販売数量 | 2,776億本 | +0.2% |
| GFB販売数量 | 2,049億本 | +1.2% |
| RRP販売数量 | 84億本 | +33.8% |
| うち加熱式製品 | 71億本 | +43.5% |
Combustiblesの販売数量はほぼ横ばいですが、世界的な需要減少が続く中でも、前年同期を上回りました。
一方で、2026年度の通期見通しでは、年間の総販売数量を前年度比マイナス1%から横ばいと予想しています。下期には複数の市場で需要が減少することなどを見込んでいるためです。
上期の販売数量が伸びたからといって、その勢いが下期以降も続くと決まったわけではありません。年間を通して販売シェアを維持できるかが重要になります。
将来の成長が期待されるRRP
JTは将来の成長分野として、RRPへの投資を強化しています。
RRPには、次のような製品があります。
| 分類 | 主な特徴 |
|---|---|
| Heated Products(加熱式製品) | 専用の機器でスティックを加熱する製品 |
| E-Vapor | ニコチンなどを含む液体を電気で加熱する製品 |
| Modern Oral | たばこ葉を使わず、口の中で使用するニコチンパウチ |
| Traditional Oral | たばこ葉を使用し、口の中で使用する製品 |
| Infused | たばこカプセルを間接的に加熱する製品 |
2025年度における世界のRRP市場は約13兆円でした。Combustiblesの約131兆円と比べると、まだ大きな差がありますが、RRP市場は成長を続けています。
また、国によって普及している製品が異なります。加熱式たばこは日本が世界最大の市場ですが、E-Vaporや口の中で使用する製品では米国が最大の市場です。
各国の規制、税金、生活習慣、製品の好みが違うため、一つの製品を世界中で同じように販売すれば成功するわけではありません。
さらに、加熱式たばこ市場では、フィリップ・モリス・インターナショナルの「IQOS」や、ブリティッシュ・アメリカン・タバコの「glo」などと競争しています。
RRPは成長市場ですが、競争も激しい事業です。市場全体が成長したとしても、JTの製品が選ばれなければ、十分な利益にはつながりません。
JTが最も力を入れているPloom
JTはRRPの中でも、加熱式たばこを最も重要な投資先としています。その中心となるブランドが「Ploom」です。
2025年12月末時点で、JTの加熱式製品は28市場、口の中で使用するModern Oralは10市場、E-Vapor・Infusedは4市場で展開されています。
2025年にはPloomの販売数量が約40%増加しました。RRP全体の販売数量とRRP関連売上収益も、いずれも前年度比20%を超える伸びとなっています。
2026年1~6月期にも、RRP販売数量は前年同期比33.8%増加しました。RRP関連売上収益も40.7%増の786億円となっています。
JTの資料によると、日本におけるPloomの加熱式たばこ市場シェアは、2024年1月の10.9%から、2026年6月には18.3%へ上昇しました。イタリア、ポーランド、チェコ、リトアニア、スロバキアなどでも販売シェアを伸ばしています。
新型の加熱式デバイス「Ploom AURA」の投入も、成長を後押ししています。デバイスとは、たばこスティックを加熱する専用機器のことです。
2026年2月時点では、19市場でPloom AURAへの切り替えを完了しています。JTは味やデザイン、スマートフォンとの連携、利用者へのサポートなどを通じて、Ploomを選ぶ人を増やそうとしています。
Ploomはまだ育成途中の事業
Ploomは高い成長率を記録していますが、現時点では紙巻たばこと同じ規模の事業ではありません。
2026年1~6月期の販売数量を見ると、Combustiblesが2,776億本であるのに対し、RRPは84億本です。RRPの販売数量は急速に増えていますが、事業規模にはまだ大きな差があります。
また、Ploomを成長させるためには、専用機器やスティックの開発、工場や販売網の整備、広告、利用者へのサポートなどに多くの資金が必要です。
実際に、2025年度と2026年1~6月期の決算では、Ploomへの投資強化が利益を押し下げる要因になっています。
JTは2026年から2028年までの3年間で、RRPへ約8,000億円を投資する計画です。現在の利益を生み出している紙巻たばこの資金を使い、Ploomを将来の利益の柱へ育てようとしています。
ただし、多額の投資をすれば必ず成功するわけではありません。
Ploomの利用者と販売シェアを増やせるか、競合製品との差を縮められるか、投資した資金に見合う利益を得られるかを確認する必要があります。
販売数量や売上の成長だけでなく、将来どのくらい利益を残せる事業になるのかも重要です。
紙巻たばこの利益でPloomを育てる
紙巻たばこの市場が縮小し、加熱式たばこの市場が成長していることから、JTが紙巻たばこをやめて、加熱式たばこへ一気に切り替えるように見えるかもしれません。
しかし、JTは両方を大切な事業と位置付けています。
現在の流れを簡単に表すと、次のようになります。
-
紙巻たばこで値上げや販売シェアの拡大を進める
-
紙巻たばこから利益と現金を生み出す
-
得られた資金をPloomなどのRRPへ投資する
-
Ploomの販売数量と市場シェアを拡大する
-
RRPを将来の第二の利益の柱へ育てる
紙巻たばこは現在の利益を支える事業であり、Ploomは将来の利益を育てる事業です。
もし紙巻たばこの利益が想定より早く減少すれば、現在の業績だけでなく、Ploomへ投資する余力にも影響する可能性があります。
反対に、紙巻たばこが安定した利益を生み出している間にPloomを十分な規模へ育てることができれば、紙巻たばこの需要が減少しても、グループ全体の成長を続けられる可能性があります。
この事業の引き継ぎが順調に進むかどうかが、JTの中長期的な成長を考えるうえで、とても重要だと思います。
たばこ事業の強みと注意点
JTのたばこ事業における主な強みを整理すると、次のようになります。
-
世界130以上の国と地域に広がる販売網
-
WinstonやCamelなどの世界的なブランド
-
市場全体が縮小する中でも販売シェアを伸ばしていること
-
値上げを利益につなげられるブランド力
-
紙巻たばこから生み出される大きな利益
-
販売数量を伸ばしているPloom
-
海外企業の買収によって事業を拡大してきた実績
一方で、次のような点には注意が必要です。
-
世界的な紙巻たばこ需要の減少
-
たばこ税の引き上げ
-
販売や広告に関する規制の強化
-
値上げによって安い製品へ利用者が移る可能性
-
原材料費や物流費の上昇
-
円安・円高による海外利益の変動
-
加熱式たばこ市場における競争
-
Ploomへの投資が十分な利益につながらない可能性
-
喫煙と健康に関する訴訟
JTは高い収益力を持つ企業ですが、その利益は規制や訴訟、為替変動などの影響を受ける事業から生み出されています。
高い利益率や配当利回りだけを見るのではなく、その利益がどのような仕組みで生み出され、どのようなリスクを抱えているのかも確認することが大切です。
今後確認したいポイント
今後の決算では、次のような点を確認したいです。
-
紙巻たばこの販売数量が市場全体よりも良い動きを続けているか
-
WinstonやCamelなどの主力ブランドが成長しているか
-
値上げ後も販売数量や販売シェアを維持できているか
-
Ploomの販売数量と販売シェアが拡大しているか
-
RRPの売上が投資額に見合って成長しているか
-
RRPで少しずつ利益を出せるようになっているか
-
為替の影響を除いても事業が成長しているか
-
各国の規制や訴訟に大きな変化がないか
特に、円安によって日本円に換算した利益が増えているだけなのか、為替の影響を取り除いても事業が成長しているのかは重要です。
そのため、JTの決算では通常の利益だけでなく、為替一定ベース(為替レートを前年と同じ条件にして比べた数字)も確認したいです。
おわりに
本記事をご覧いただき、ありがとうございました🐰
今回は、JTの利益を支えるたばこ事業について、紙巻たばこなどのCombustiblesと、Ploomを中心とするRRPに分けて確認しました。
世界の紙巻たばこ需要は長期的に減少していますが、JTは値上げ、主力ブランドの成長、販売シェアの拡大などによって、売上と利益を伸ばしています。
その中心となっているのが、Winston、Camel、MEVIUS、LDといった世界的な主力ブランドです。市場全体が縮小しても、競合他社から販売シェアを獲得し、適切な値上げを実施できれば、利益を成長させる余地があります。
一方、将来の成長分野として投資を拡大しているのが、Ploomを中心とするRRPです。足元では販売数量や市場シェアが伸びていますが、事業規模はまだ紙巻たばこより小さく、成長には多額の投資も必要です。
JTの今後を考えるうえでは、現在の利益を生み出す紙巻たばこと、将来の利益を生み出すことが期待されるPloomの両方を確認する必要があります。
紙巻たばこで十分な利益を確保できている間に、Ploomを第二の利益の柱へ育てられるのか。ここが、JTの中長期的な成長を左右する重要なポイントになりそうです。
次回は、医薬事業を塩野義製薬へ承継した理由や、現在の加工食品事業の役割について詳しく確認していきます🐰
本記事は以上です♪
本記事をご覧いただき、ありがとうございました!