
こんにちは!うさたんです♪
東京海上HDの深掘りシリーズ第1回では、会社の基本情報や東京海上日動との違い、グループ全体の事業構造を確認しました。
東京海上HDというと、自動車保険や火災保険を扱う国内の損害保険会社という印象が強いかもしれません。
しかし、実際には①国内損害保険、②国内生命保険、③海外保険、④ソリューションという複数の事業を展開しています。
なかでも海外保険事業はグループの利益を支える大きな柱に成長しています。
今回は、4つの事業が「誰に、どのような商品やサービスを提供しているのか」「グループ内でどのような役割を担っているのか」を詳しく確認します🐰
🌟企業HP
東京海上HDの4つの事業
はじめに、東京海上HDの事業内容を大きく整理します。
| 事業 | 主な顧客 | 主な商品・サービス |
|---|---|---|
| 国内損害保険事業 | 個人、企業、官公庁など | 自動車保険、火災保険、傷害保険、企業向け保険、船舶・貨物保険など |
| 国内生命保険事業 | 個人、法人 | 死亡保険、医療保険、がん保険、就業不能に備える保険など |
| 海外保険事業 | 海外の個人・企業 | 企業向け保険、スペシャルティ保険、自動車保険、生命保険など |
| ソリューション事業 | 個人、企業、自治体など | 防災・減災、サイバーセキュリティ、ヘルスケア、リスク管理支援など |
これらの事業は、それぞれが完全に独立しているわけではありません。国内外のグループ会社が持つ商品、販売網、保険引受の知識、資産運用力などを共有しながら、グループ全体で事業を展開しています。
① 国内損害保険事業
国内損害保険事業の中心となるのが、東京海上日動火災保険です。このほか、日新火災海上保険や、インターネットを中心に自動車保険を提供するイーデザイン損害保険などもグループに属しています。
損害保険は、事故や災害などによって発生した経済的な損失を補償する保険です。個人向けの自動車保険や火災保険が身近ですが、東京海上グループは企業向けにも幅広い保険を提供しています。
個人向けの損害保険
個人向けでは、主に次のような保険を取り扱っています。
- 自動車事故による損害を補償する自動車保険
- 火災や自然災害などによる建物・家財の損害を補償する火災保険
- けがや日常生活での事故に備える傷害保険
- 旅行中の病気や事故、携行品の損害などに備える旅行保険
例えば、自動車保険では、相手にけがを負わせた場合の賠償、自分や同乗者のけが、車両の損害などに備えられます。火災保険では、火災だけでなく、契約内容に応じて風災、水災、雪災なども補償の対象になります。
企業向けの損害保険
企業向けでは、事業活動に伴うさまざまなリスクを対象としています。
工場や店舗の火災、機械設備の故障、商品の輸送中に発生した損害、従業員の労災、顧客に対する賠償責任など、企業によって抱えるリスクは異なります。そのため、企業の業種や事業内容に応じて補償を組み合わせる必要があります。
近年は、サイバー攻撃による情報漏えいやシステム停止、役員の経営判断に対する損害賠償請求、再生可能エネルギー事業に関する事故など、新しいリスクに対応する保険も重要になっています。
このような一般的な保険では対応しにくい分野を対象とした保険は、「新種保険」や「スペシャルティ保険」と呼ばれます。
東京海上HDは、海外グループ会社が持つ専門知識や商品開発力を国内へ取り入れ、サイバー、ヘルスケア、中小企業、レジリエンス、GXなどの分野を成長領域として位置付けています。
② 国内生命保険事業
国内生命保険事業の中心となるのが、東京海上日動あんしん生命保険です。
生命保険は、死亡や病気など、人の生命や健康に関するリスクに備える保険です。損害保険が事故や災害によって発生した損害を補償するのに対し、生命保険は契約時に定めた条件に該当した場合、保険金や給付金を支払います。
主に次のような商品を取り扱っています。
- 死亡した場合や高度障害になった場合に備える死亡保険
- 入院や手術などに備える医療保険
- がんの診断や治療に備えるがん保険
- 病気やけがで働けなくなった場合に備える保険
- 長期間の介護などに備える保険
生命保険は契約期間が長くなりやすく、契約者との関係も長期にわたります。そのため、将来支払う保険金を見積もりながら、受け取った保険料を適切に運用する必要があります。
東京海上グループは、損害保険と生命保険の両方を扱うことで、事故や災害だけでなく、病気、死亡、介護など、生活に関係する幅広いリスクに対応できます。
また、損害保険の代理店網を通じて生命保険を案内できる点も、グループとして事業を展開する利点の一つです。ただし、生命保険には損害保険とは異なる商品設計やリスク管理が求められるため、同じ保険でも利益の生まれ方は完全に同じではありません。
③ 海外保険事業
東京海上HDの事業内容を理解するうえで、特に重要なのが海外保険事業です。
海外事業では、北米、欧州、中南米、アジアなど、世界各地で保険を提供しています。地域ごとに経済環境や保険の普及率、主力商品が異なるため、それぞれの市場に合わせた事業を展開しています。
| 主な地域 | 事業の特徴 |
|---|---|
| 北米 | 企業向けのスペシャルティ保険を中心に展開 |
| 欧州 | ロイズ市場などを通じて専門性の高い保険を提供 |
| 中南米 | ブラジルを中心に、自動車保険などを展開 |
| アジア |
経済成長や保険普及率の上昇を取り込む事業を展開 |
北米を中心とするスペシャルティ保険
海外保険事業の中でも、特に存在感が大きいのが北米です。
北米では、Philadelphia、Delphi Financial Group、Tokio Marine HCCなどのグループ会社が事業を展開しています。一般的な個人向け保険だけでなく、企業が抱える特殊なリスクを対象とするスペシャルティ保険を強みとしています。
例えば、次のような保険があります。
- 企業の役員が損害賠償請求を受けるリスクに備える保険
- サイバー攻撃や情報漏えいに備える保険
- 再生可能エネルギー事業に関する保険
- 従業員向け医療制度の高額な支払いに備える保険
- 契約上の義務を履行できない場合などに備える保証保険
スペシャルティ保険では、保険を引き受ける企業や事業のリスクを細かく分析する必要があります。単純に契約件数を増やすだけではなく、「どのリスクを、どの保険料で引き受けるのか」を適切に判断する専門性が重要になります。
この判断をアンダーライティングと呼びます。アンダーライティングとは、保険契約のリスクを評価し、引受可否や保険料、補償条件などを決めることです。
欧州・中南米・アジアでの展開
欧州では、Tokio Marine Kilnなどを通じ、ロイズ市場を含む専門性の高い保険分野で事業を展開しています。ロイズは一つの保険会社ではなく、多数の保険引受組織などが集まる英国の保険市場です。船舶や航空、自然災害、企業固有のリスクなど、複雑な保険を扱うことで知られています。
中南米では、ブラジルのTokio Marine Seguradoraが主要な事業会社となっています。自動車保険などを中心に規模を拡大しており、東京海上HDの資料では、ブラジルの自動車保険市場におけるシェアが2014年の5.9%から2024年には14.2%へ上昇したとされています。
アジアなどの新興国では、経済成長や自動車の普及、企業活動の拡大などに伴い、保険需要が増える可能性があります。日本や欧米と比べて保険の普及率が低い地域では、将来的な成長余地も期待できます。
④ ソリューション事業
東京海上HDは、保険金を支払うだけでなく、事故や災害による被害そのものを減らすソリューション事業にも力を入れています。
保険は、事故や災害が発生した後の経済的な損失を補うものです。しかし、保険金を受け取れたとしても、けがや事業停止、顧客からの信用低下など、元の状態へ完全に戻せない損失もあります。
そこで東京海上HDは、グループが保有する事故や災害のデータに、外部の専門技術を組み合わせ、防災・減災などの支援を行っています。
主な分野として、次のようなものがあります。
- 自然災害の発生可能性や被害規模の分析
- 建物や工場の防災・減災対策
- サイバー攻撃への対策や事故発生時の支援
- 企業の健康経営や従業員の健康管理支援
- 自動車事故の防止や安全運転の支援
- 自治体や企業の事業継続計画の策定支援
東京海上HDは、2025年に建設コンサルティングを手掛けるID&Eホールディングス*1を買収しました。
ソリューション事業は、顧客の損害を減らすだけでなく、東京海上HDにとっても保険金支払いの抑制につながる可能性があります。ただし、保険事業と比べると現時点の規模はまだ小さいため、今後どこまで収益の柱へ育てられるかが注目点となります。
巨大な損失に備える再保険
保険会社は多数の契約を引き受けますが、大規模な台風や地震、ハリケーンなどが発生すると、短期間に多額の保険金を支払う可能性があります。
そこで利用されるのが「再保険」です。
例えば、東京海上グループが引き受けた大規模災害のリスクの一部を再保険会社へ移しておけば、実際に災害が発生した際の負担を抑えられます。
ただし、再保険を利用するには再保険料を支払う必要があります。世界各地で大規模災害が増え、再保険料が上昇すると、保険会社の利益を圧迫することもあります。
再保険は独立した4事業の一つではありませんが、国内外で大きなリスクを引き受ける東京海上HDにとって、損失を管理し、財務の健全性を保つための重要な仕組みです。
4つの事業はどのようにつながっている?
東京海上HDの4つの事業は、それぞれが別々に活動しているだけではありません。グループ内で商品、販売網、技術、データ、資産運用の知識などを共有しています。
例えば、海外のグループ会社が持つサイバー保険の知識を国内の商品開発に活用したり、国内の顧客が海外進出する際に現地のグループ会社が保険を提供したりできます。損害保険の代理店網を通じて、生命保険を提案することも可能です。
また、保険事業で蓄積した事故や災害のデータを、ソリューション事業の防災・減災支援に活用できます。反対に、ソリューションによって事故や被害を減らせれば、保険事業で支払う保険金の抑制にもつながります。
東京海上HDの資料では、グループの商品、販売網、資産運用力、再保険などを活用した相乗効果による利益貢献を、2024年12月末時点で年間約1,000億円と試算しています。これは会社側の試算であり、毎年確実に同額の利益が得られるという意味ではありませんが、国内外に複数の事業会社を持つことが、規模の拡大だけではなく、グループ全体の競争力にもつながっていることが分かります。
おわりに
本記事をご覧いただき、ありがとうございました🐰
東京海上HDは、国内で自動車保険や火災保険を提供するだけの企業ではありません。
国内損害保険では、個人向けの身近な保険から企業向けの専門性が高い保険まで幅広く扱っています。国内生命保険では、死亡、病気、就業不能など、人の生命や健康に関するリスクに対応しています。
海外保険では、北米を中心にスペシャルティ保険を展開し、欧州、中南米、アジアなどにも事業を広げています。さらにソリューション事業では、事故や災害が起きた後に保険金を支払うだけでなく、被害そのものを減らす取り組みを進めています。
事業と地域が分散されている点は、東京海上HDの魅力の一つです。一方、扱う事業が多く、海外展開も広いため、利益の仕組みは単純ではありません。保険料を多く集めれば、そのまま利益が増えるわけではなく、支払う保険金や事業経費、資産運用の結果なども関係します。
次回は、東京海上HDが集めた保険料からどのように利益を生み出しているのか、保険引受利益、損害率、事業費率、コンバインド・レシオ、資産運用収益などを確認します。
さらに、国内損害保険や北米のスペシャルティ保険で発揮している強み、国内外のグループ会社が生み出す相乗効果、今後の成長戦略についても考えます。
本記事は以上です♪
本記事をご覧いただき、ありがとうございました!
*1:ID&Eホールディングスは、東京海上ホールディングスによる完全子会社化に伴い、2025年5月13日をもって上場廃止となりました。